9.11

毎日が適度に幸せで

適度にしんどくて

それなりのお金もあって

たまには外食して

久しぶりに友達と会って

期限間近の定期を更新して

満員電車にも慣れて来て

ホチキスの芯を探して

コピー機の紙が切れて補充して

海外旅行の手続きをエージェントに任せて

図書館で一日中やる気を探して

乞食を哀れんで

裕福さを妬んで

人に媚びて

ジャム作りを体験して

慈善事業に没頭して

反社会的な思想に憧れてあきらめて

見上げた青空が苦痛に歪み

現実と夢との境界線を見失いそうなぐらいの

光景が乗り遅れた地下鉄を見送るかのように

日常の景色にとけ込む

よその国のできごとが更によその国になる

崩壊するアメリカをテレビのニュースで見た夜

非現実的な事などないと感じた夜

すべては完璧に突然に起こる

今日がその日だったんだと思い出した

地下鉄でサリンが撒かれた

アメリカのビルに飛行機が突っ込んだ

宝くじが当たった

下痢になった

おばあちゃんが亡くなった

突き指した

ゴキブリがいた、もう姿は見えない

すべての現実は突然、完璧な姿で起こる

怖いと思う。